あとがきのあとがき

2011年04月13日 19:35

5月刊行予定の新刊にまたあとがきを書きました。

あとがきの中で漏らす方もいるのでわりと知られていることかとは思いますが、

あとがきというものに苦手意識のある作家はけっこういます。

あとがきは一見すると「何を書いてもいいんだから楽」というふうに思えますが、

たぶんこの「何を書いてもいい」というのが曲者なのです。

 

たとえば、本当に「何を書いてもいい」とばかりに思いつくまま、好き勝手に書いた場合、

あとがきはこうなります。


あとがき

こんにちは著者です。解説の舞の海さんが再三言っていることですが、最近の力士は工夫が足りなすぎるんじゃないでしょうか。取組前にもうちょっと相手を研究して作戦を練るべきなんじゃないかと思います。真っ向勝負をしたら横綱に勝てるわけないんですから、せめて立ち合いで大胆に右に動いて上手を狙うとか、横綱が張り差しで来る、とヤマをはるとか、そうでなくともせめて執拗に突っ張って横綱を焦らせようとするとか、普段はやらない両差し狙いでいくとか、横綱の予想を裏切る何らかの作戦をとらなきゃ勝てるわけがないと思います。「何も考えず、思いっきりぶつかります」というのは「思いきりのよさ」ではなくただの「工夫のなさ」であって、その点朝青龍などはそこらへんしっかりやっていました。だから強かったんですよ。

ところで昨夜、変な夢を見ました。なんか吉田と一緒に京都駅らしきところを歩いているのですが、目の前に突如うす緑色のマギー審司が降ってきて、しかも意外なことに


もういいです。

誰も訊いていないことを書くわ吉田って誰だか分からないわ、

あげくに見た夢の話をするわで滅茶苦茶です。

こんなもんでいいなら書く方は楽ですが、そんなもん誰も読みたくないです。

そういうのはお金をとらないブログでやんなさい、となります。

「何を書いてもいい」というのはそういうことではなくて、

「何でもいいから何か面白いことを書いてください」という意味なのです。
テーマもジャンルも一切、ヒントなし。
でも、一定以上の品質は要求される。
だから難しいわけです。
「何でもいいから何か面白いことをしてください」と言われた芸人と一緒です。

 

作品のことを書けばいいじゃないか、という意見があります。

確かに小説を書く人の中には、周囲には「自作品については語ることがない。

語るべきことは作品の中で語っている」と言っているくせに、

内心では自作品について語りたくて仕方がない、という人がいます。

そういう人に自作品を語らせようとすると、最初は「特に何もない」と言います。

ですが、根気よく水を向けると、ある時点から急に舌が滑らかになります。

そこでお酒など飲ませつつさらに水を向けると、じきに長口舌を始めます。

10分後に「ういろう売り」レベルになります。

20分後に「黒柳徹子」を超えます。

いえ、私のことなんですが。

 

ですが、当然のことながら酔っぱらって生成されたにわか徹子の話が面白いわけがなく、

(世の中には「酔っぱらわせた方が面白い先生」というのもいるようですが……)

これでお金をとるのは無理、というレベルの話がほとんどです。

だいたい、ミステリで作品について語るとネタバレになるわけでして。

 

「あとがきに何を書けばいいのか分からない」という作家が多いのは、

こういう理由によります。
別に遠慮しているわけでもなんでもなく、本当に書くことがないのです。

いや、私は適当にやっているので、あんまり苦労していないのですが。



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