隣の国のアリス

2011年05月23日 18:24

先日、友人Y氏と焼肉を食べにいった。

彼の薦めで、焼肉なら新大久保駅あたりに行ってみよう、という話になった。

千葉県民である似鳥は知らなかったが、

JR新大久保駅周辺は昔からのコリアタウンで、

韓国料理系の店がたくさんあるはずだというのである。

 

ところが、いざ新大久保駅周辺に着いてみると、何か違う。

確かに韓国料理の店はたくさんあるのだが、

ほとんどが「韓国家庭料理」の店で、しかも妙に綺麗でお洒落である。

我々がイメージしていた「韓国人のやっている、雑然としていて賑やかな焼肉屋」は、

一軒も見当たらない。

Y氏「なんかお洒落な店ばっかりで入りにくいね」

似鳥「そうですねえ。まあ、カップルだらけとかじゃないから平気ですよ」

Y氏(元自衛官)「いや、なんか客が女性ばっかりで俺、入れる気がしないんだけど」

似鳥「焼肉って一見おっさんぽいけど、女性もふつーに好きですからねえ」

Y氏「あと、この道ちょっと人多すぎない?」

似鳥(千葉出身)「こんなもんなんじゃないですか? 東京だし」

Y氏(東京出身)「いや東京だからってこんなんならないから」

似鳥「イベントでもあったんですかね。コンサートとか」

不審がるY氏。のほほんとしている似鳥。

もちろん、不審でも腹は減る。どこでもいいから入ってみましょうという話になり、

通りで呼び込みをしている小奇麗な店に入った。

その店は満員だったので、我々は外の椅子に座って順番待ちをしていたのだが、

店内をよく見ると、なぜかお客さん全員が女性である。

その中に我々、30代男性2名。

当然のことながら、中のお客さんたちにちらちら見られる30代男性2名。


元自衛官のY氏、そわそわしだす。「なんかここの空気、俺にはすごく辛いんだけど」

何を食べるかしか頭にない似鳥、平然。「そうですか? おいしそうですよ」

Y氏、店員さんを見る。「あとなんか店員さんが妙にイケメン」

似鳥、言われて気付く。「そういえば、王子様みたいなのばっかりですね」

Y氏立ち上がる。「出よう。ここは俺たちのような人間がいていい店じゃない」

結局、キャンセルして店を出たのだが、韓国人らしき店員さん(イケメン)は

端正な笑顔と丁寧な日本語で「また機会がありましたらお越しください」と笑顔だった。

 

店を出てしばらく歩き回る。

似鳥、ようやく気付く。そういえば、ちょっとおかしい。

そういえば、周囲の韓国料理店の店員さんはことごとくイケメンである。

そういえば、この通りには「何かあったのか」というぐらい人が多い。

そういえば、さっき入った店の上には、

K‐POPや韓国ドラマのマニアックなDVDを置いている店があった。

そういえば、歩いているのは若い女性ばかりで、男の2人連れなど我々だけである。

しかも、彼女らの着ているシャツやスカーフはどことなく韓流ドラマっぽい。

これらの「そういえば」はどこから発生しているのか?

どことなく韓流なこの乙女達はどこから湧いているのか?

 

角を曲がり、JR新大久保駅の前に来て、その謎が解けた。

JR新大久保駅の出口から、韓流ファッションの乙女達が大量に吐き出されていた。

乙女の奔流は歩道いっぱいに広がり、溢れ、

我々がさっき歩いていたイケメンロードに吸い込まれていく。

Y氏及び似鳥、戦慄。

流れに逆らい、ひしめく乙女達をかきわけて必死で歩く。

新大久保駅の出口を通りすぎると、急に乙女がいなくなった。

ふう、と大きく息を吐いて振り返ると、新大久保駅の出口から、

さっきのイケメンロードに流れ込む乙女の流れが一望できた。

Y氏が得心したように頷いた。「俺たちのいた所はコリアタウンじゃない。韓流タウンだ」

 

あとで知ったことだが、

JR新大久保駅周辺には昔からコリアタウンがあったが、
駅の東側、大久保周辺は、
東日本で最も韓流グッズのお店が充実しており、

週末には韓流ファンが各地から集まる「韓流タウン」になっているのだった。

我々30代男性2名がイメージしたコリアタウンはその西隣、

JR大久保駅や百人町のあたりであり、JR新大久保駅より東は別世界なのだった。

もともと西側に広がっていたコリアタウンが東側に拡大して韓流タウンができたのか、

コリアタウンの東側が韓流タウンに変化したのか、

そのあたりの経緯はよく分からない。

はっきりしているのは、我々が浮きまくっていたことだけである。

 

その後、新大久保駅西側でようやくイメージ通りの店を見つけた我々は、

「サムギョプサル」が発音できずに何度も聞き返されながら、

「やはり俺たちはこっちの世界の住人」と頷きあい、ほっと息をついたのだった。

スポンサーサイト


最新記事