日出づる国の優しい怪物

2012年11月26日 21:38

子供のころから魑魅魍魎が好きで、妖怪とか怪物関係の本をよく読んでいたのですが。

日本の妖怪と海外の妖怪を比べると、気付くことがあります。

 

たとえば海外の妖怪。

 

・ヴォジャノーイ(スラヴ・ヨーロッパ)

池や川に棲む。全身苔だらけの巨大な魚またはカエルの姿で、人間を食う。

 

・キョンシー(中国)

腐らない動く死体。怪力で、人を殺す。

 

・ウェンディゴ(北米)

身長五メートルを超す巨人。人を凍死させて食う。


 

怖いんですよ。海外のは。

これに対し、日本の妖怪。

 

・垢舐め

掃除されていない風呂場に出る、長い舌で垢を舐める妖怪。

 

・枕返し

寝ている人の枕を動かしてしまう妖怪。

 

・豆腐小僧

雨の日に豆腐を持って現れる子供の妖怪。

この豆腐をうっかり食べてしまうと、全身にカビが生えてしまう。


 

……やることがぜんぜん怖くないのです。

それより江戸時代には、

妖怪の持ってきた豆腐を「うっかり食べてしまう」ような人がいたのでしょうか。

 

もちろん、海外にも怖くない妖怪はたくさんいますし、日本にも怖い妖怪はいます。

ですが、たとえば。

 

・チョンチョン(ペルー)

耳を翼にして空を飛ぶ生首。人を殺す。

殺された人間は首なし死体となり、首は新たなチョンチョンとなる。

 

・抜け首(千葉)

腹立たしいことがあると夜中に首が抜けてしまう男。翌朝、驚かせたことを謝りにきたりする。

 

・デュラハン(ケルト)

首なし馬に乗った首のない騎士。出会うと死ぬ。

 

・トシドン(鹿児島)

首なし馬に乗った老人。暮れに家々を回って悪い子をこらしめ、お餅を置いていく。


 

似たような外見の妖怪でも、日本に来るとなんだか、いい人になってしまうのです。

中には命を取るようなものもいるのですが、日本の妖怪は基本的に、

人間を脅かしたり迷わせたりするだけで、あんまりたいしたことはしないのです。

そのかわり。

 

・のっぺら坊

振り返って目鼻口のない顔を見せ、びっくりさせる妖怪。

 

・顔撫で

夜道を歩いている人を冷たい手で撫で、びっくりさせる妖怪。

 

・イマモ

山道を行く人をびっくりさせる妖怪。

旅人が「昔、ここには血だらけの手が出てきたそうだ」と話すと、

「イマモ!」と声がして、血だらけの手がごろごろ転がってきた。

びっくりして逃げ出した旅人は、逃げた先でうっかり

「昔、ここでは人の生首も落ちてきたそうだ」と話してしまったが、

そうするとまた「イマモ!」と声がし、生首が転がってきたという。


 

……脅かすスキルだけ異様に発達しているのです。これが日本の妖怪の持ち味なのです。

 

なんでこんなことになるのか、については発祥の経緯などから色々に説明できるのですが、

全般にやることがみみっちくなる最大の原因は、次の妖怪にあると思うのです。

 

・ぬらりひょん

大きな商家などが忙しい時間帯にぬっと現れ、

その家の主人のような顔でどっかり居座り、勝手に飲み食いする妖怪。

家人は皆忙しいし、あまりに当然のような顔で飲み食いしているため、

家の者は「誰かの招いたお客人だろう」と勘違いし、

客は「知らないが、この家の偉い人だろう」と勘違いするため、誰も咎めない。

そのためこの妖怪が現れた家は、勝手に飲み食いされてしまう。

水木しげるによると、日本妖怪の総大将だという。

 


……総大将がこのみみっちさでは、下々の者がああなるのも無理はないわけで。

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