虚構世界ではしばしば西から日が昇る

2013年02月12日 00:20

ついでに、小説を書いていると作品世界内でよく起こる怪奇現象あれこれ。

 

①時間がふっ飛ぶ。

場面転換後の冒頭の文章がこうなります。

 

翌日の水曜日、僕はまず放送室から訪ねることにした。……

(中略)

次の日、例によって昼休み後にのっそりやってきた加納先輩を捉まえ、……

(中略)

一晩明けるとたいていのことは冷静に見つめられるようになる、ということらしい。

翌日登校した僕は、……

(中略)

結局、その晩はいくら考えても推理が前に進まず、僕は寝入るまでずっと「不可能だ」という結論の周囲を
うろうろしているだけだった。翌日の登校中も、授業中も昼休みも、……

 

……おかしいですね。何回「翌日」になるのでしょう。

最初が水曜日なのですから、最後のシーンでは土曜日になっているはず。

なのに、普通に学校があるのはどうしたことでしょう。

それともこの主人公は土曜日と日曜日という時間を体験できず、

金曜日が終わると月曜日に飛んでしまう特異体質なのでしょうか。

 

 

②太陽が西から昇る。

たとえば、こういうのを書いてしまったりします。

 

僕は自室のベッドに寝転がったまま、窓越しに空を見た。十二月の太陽は、この時間でもう赤く色付き、
沈む支度を始めている。

(中略)

むろんそれは夢であり、現実の僕は自室のベッドで寝たまま、シーツをぐしゃぐしゃにしてのたうちまわって
いただけだった。なぜこんなにのたうちまわっていたのかについては一瞬のうちに忘れてしまい、溜め息をついて
カーテンを開ける。赤く染まって上下にやや潰れた、朝の太陽が昇っていた。

 

これも変です。「自室のベッド」の横にある窓はどっちの方角を向いているのでしょう。

同じ窓から沈む夕日と昇る朝日が見えています。

それともこの家は某有名建築家の建てた奇抜な「館」で、

夜の間にくるくる向きを変えるのでしょうか。

 

③登場人物の二重体が出現する。

校正さんによく指摘されるミスです。

 

「ちょっと待った」綿貫さんが立ち上がった。「だからさっき言っただろ。15分しかなかったんだ。
その
15分という数字だって、途中1度も立ち止まらず、しかも誰にも見られなかったっていう前提でだぞ?」

(中略)

「もう知るか。少なくとも俺は関知しないからな」綿貫さんは憤然として立ち上がり、乱暴に戸を開け放して
出ていった。

 

綿貫さん、あなたこそちょっと待った。

あなた最初のところでもう立ち上がってたのに、

どうやって次でもう1回立ち上がったんですか。

それとも最初に綿貫さんが立ち上がった瞬間に、

座ったままの状態の彼の「二重体」が出現し、次に立ち上がったのはそいつ、

ということでしょうか。

 

 

その他にも、主人公の隣の席が3つも4つもあったり、

朝の新宿駅ホームなのに囁き声で会話ができていたり、

夜、暗がりにいるのに向かいにいる人の表情が分かってしまったり、

小説世界を構築中は様々な怪奇現象が起こります。

で、世界を作っている著者は、しばしばそういうことに気付かず、

編集さんや校正さんに言われて慌てるのです。


1つの世界を前後の矛盾なく創りあげるというのは、意外と大変みたいです。

そう考えると天におわすあの方とかイザナギ・イザナミとかブラフマーとか、

ああいう創造神の方々の後ろにも、

実は「編集神」とか「校正神」とかがいたのかもしれません。

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