室伏かハルクを狙え

2014年08月14日 22:59

小学校の頃、男子の間ではドッジボールが大流行りだった。

休み時間にドッジボール、放課後にドッジボール、

授業時間が余ったら外に出てドッジボール、だった。

一体何が当時の小学生男子をあそこまでドッジボールに駆り立てたのか

今となっては謎であるが、

とにかくボールを使った遊びといえばドッジボールで、

その時だけはクラス内のグループも関係なく、

強い奴も弱い奴もドッジボールだった。

(弱い奴はボールを投げさせてもらえなかったが。)

で、ドッジボールをやっている時、私はいつも首をかしげていた。

みんな、相手チームの「一番強い奴」ばかり狙ってボールを投げるのである。

 

知っての通り、ドッジボールのルールは「コートに残っている人数が多い方が勝ち」である。

仮に相手チームに室伏広治と野比のび太がいたとしても、どっちも「1人」扱いである。

だったら、まず狙うべきはのび太の方ではないか。

室伏の方を狙ってもボールをキャッチされるに決まっているし、

仮に当てたところで、何しろ室伏である。外野から殺人剛速球を投げてきて誰かのどてっ腹に穴が開き、

室伏はすぐに内野に戻って元の黙阿弥、味方の死体が1つ増えただけ、という結果になるに決まっている。

(※あくまで比喩である。室伏広治は殺人などしない)

それなのにみんな、頑なに室伏を狙った。

結果として、試合中は室伏とかハルクみたいなやつの間だけでボールがやりとりされ、

(※そんな小学生はいない。当時の私にはそう見えていた、というだけである。)

弱い奴はコートの隅でいつまでも突っ立ったまま、

植物のように平穏にいつまでも生き残る結果となった。

私は思っていた。みんな、馬鹿じゃないのか。

勝ちたくはないのだろうか?

 

今なら分かる。

勝ちたくないのである。

 

というより、弱い奴から順に狙ってルール上の勝利を得たところで、

ぜんぜん楽しくないのである。

それより、無理と分かっていても室伏に挑み、万に一つでも室伏を倒せたなら、

そちらの方がよっぽど盛り上がるのである。

なにせみんな小学生男子なのだ。ルール上のチマチマした勝利より、

「室伏を狙った男」「室伏を倒した男」という名誉が欲しいのである。

(逆に、のび太やMr.オクレみたいな奴を優先的に狙うと「卑怯者」の称号を賜ることになる。)

だからみんな大物を狙う。

それに、ボールを取られて守備に回ったとして、

のび太より室伏が投げてくる方がよっぽどスリルがあり、面白い。

子供の遊びとは、そういうものである。遊びなのだから、盛り上がることが第一なのだ。

しかし私はそれを理解せず、のび太ばかり狙っていた。(しかも、姑息に足元ばかり狙っていた。)

当時からそういう性格だったのである。

いや、きっと真面目だったのだ。

真面目だから、ルール上の勝利こそ至上、と思ってのび太を狙っていたのだ。

のび太の先にあるのは盛り下がるだけの、空しい勝利だったのだが。

 

ちなみにドッジボールは漢字で書くと「避球」なのであるが、

当時の私たちは「闘球」だと信じて疑わなかった(そういう漫画があったのである)

私たちがやっていたのは「避球」ではなく「闘球」だったのだと考えれば、

なんとなく納得がいく。

「闘球」で強い奴を避けるのは、ルール違反なのだ。


スポンサーサイト

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://nitadorikei.blog90.fc2.com/tb.php/108-2c22462a
この記事へのトラックバック


最新記事