ガールフレンドがいたころの話

2010年11月23日 20:09

昔々、「ハンサム」と言われる男がいた。

もっと昔には、「男前」や「二枚目」と言われていた。

今の「イケメン」である。

昔々、「ガールフレンド」と呼ばれる女がいた。

もっと昔には、そんな女はいなかった。

今は「彼女」と「友達」に分かれたものの、元気に暮らしている。

時代を追って言葉は変わる。

確かにトックリセーターを着て乳母車を押す人も見なくなったし、

カワイコちゃんにアタックしてアベックになる人も見かけない。

アベックにはスポーツの世界でなるものであるし、

アタックは好きな人ではなく山にするものである。

が、これらの単語は同じ概念を「ただ言い換えているだけ」ではない。

三浦春馬や成宮寛貴はイケメンだが、
野々村真やチャン・ドンゴンはハンサムである。

高倉健とか渡哲也は「男前」である。

仮に「イケメン」という言葉がなかった時代に三浦春馬がいたら、

現在「イケメン」と評されるのと同じように「ハンサム」とか

「男前」と評されたかというと、疑問である。

なんか目つきが怖いとか女みたいとかいろいろ言われそうである。

逆に二十代の高倉健が現代にタイムスリップしたとしても、

「イケメン」とは評されずやっぱり「男前」と呼ばれるだろう。

「イケメン」というにはあまりに男らしすぎる。ゴツすぎる。

「かっこいい男」を指す言葉が

「男前」→「ハンサム」→「イケメン」

と変わったのは、「かっこいい男」のイメージが

「寡黙剛健硬派顔」→「快活スイート軟派顔」→「中性ちょい悪細面」

と変わったからで、

男前は今でも男前であり、ハンサムは今でもハンサムだと思う。

そういえば「硬派」「軟派」も聞かなくなった。全員軟派になったためだろう。

同様に、「ガールフレンド」は
「ただの友達」「友達以上恋人未満」「恋人」をすべて包含するが、

「彼女」はつまり「恋人」のことである。
「ガールフレンド」と「彼女」は別物である。

「ガールフレンド」が「彼女」と「友達」に分かれたのは、

「友達」と「彼女」をはっきり区別してもさしさわりがなくなったためだろう。

「ガールフレンド」の時代には「不純異性交遊」なる言葉があったわけで、

恋人を堂々と「彼女です」と紹介するのがためらわれ、

友達なのか恋人なのかを曖昧にしておく必要があったのだろう。

強姦も暴行も全部「暴行」と表記して曖昧にしていた時代のことであり、

「友達」と「恋人」の他に
「セフレ」という言葉まである現代からすると隔世の感がある。

ちなみに、「カップル」は「成立する」が、
「アベックが成立する」とはあまり言わない。

言ったとしても、ただ単に「男女一組になっている」というニュアンスになる。

それも同じ理由だろう。「カップル」は狭義の「アベック」であり、
両者は別物である。

そう考えてみれば、「乳母車」と「ベビーカー」、
「トックリセーター」と「タートルネック」も、

素材やデザインの方向性など、どこかに差があるのかもしれない。

日本中のお店をくまなくさがせば、

「トックリセーター」としか呼びようのないタートルネックや

「乳母車」としか呼びようのないベビーカーがどこかにあるかもしれない。

しかし、「カワイコちゃん」がどこに行ったのかを知る者はいない。

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