さりげなく腹で押してくるそいつ

2011年01月08日 23:29

実家の庭には餌台があるので、雀の群れがよくやってくる。

ぎゃあぎゃあ騒ぎながら皿に群がり米粒をむさぼる姿が愛らしいのだが、

(なんだか愛らしくない書き方だが……)

あまりのごちそうに盛り上がりすぎるのか、

群れの中には必ず一羽、「皿の中に入って食べるやつ」が出てくる。

お前、邪魔だって。ていうかそれ、何かあった時に逃げ遅れるぞ。


公園や駅前広場で鳩に餌をやっている人を時折見る。
餌を撒く人のまわりに群がる鳩は微笑ましくもあるのだが、

群れの中には必ず一羽、「撒く人の腕や肩に乗るやつ」が出てくる。

お前、危ないぞ。撒く人がその気になったら即、捕まるぞ。

こういうやつらは他の鳥より度胸があるといえないこともないのだが、
むしろ無鉄砲で短慮な「お調子者」なのだと思う。

人間でいうなら、「成人式でパトカーを破壊するバカ」とか

「カーネルサンダースを川に投げ落とすバカ」にあたるのではないだろうか。

一方、鳩の群れの中には、妙に集団から外れているやつもいる。
一応、皆と一緒に餌の投げられた方へ向かうのだが、
我先にと争うのではなく、いつも群れの後尾にいて、

群れの中にいるやつが時折誤って弾き飛ばす餌を取ろうとか、

次回、逆方向に餌が撒かれた時に一番になろうとか考えるやつである。

餌台に来る雀にも似たようなやつがいて、

皆と一緒に餌台の上で場所取りをしようとせず、

地べたを歩き回って餌台からこぼれた餌をついばむ。

こういうやつらはつまり「あまのじゃく」なのだろう。

人間で言うなら、たとえばネット上で
「一番むなしい趣味って何?」という話題で盛り上がっている時に

「こういう掲示板に書き込むこと」とかいったメタな書き込みをして

目立とうとするあの人種である。

小学校の頃、七夕の短冊に「すべての願いがかないますように」と書いた俺も

間違いなくこのタイプである。

だから、こういうやつらを見ていると親近感が湧く。

ちなみに、こういうやつらは「俺は他のやつより頭がいい」と思っている。

実際には、ただ単にひねくれているだけである。

集団が盛り上がると必ず一定数の「お調子者」と「あまのじゃく」が出現する。
それは鳥だろうと人間だろうと変わらないらしい。

もともと集団の中に潜在的な「お調子者」と「あまのじゃく」がいて、

盛り上がった際にそいつらが本性を出すということなのだろうか。

それとも、「盛り上がる集団」というのはそもそもシステム的に、

一定数の「お調子者」と「あまのじゃく」を生み出すものなのだろうか。

群れの中の個体を追跡的に観察すれば分かるかもしれない。



ちなみに集団においては、
「多数派」「お調子者」「あまのじゃく」の他にもう一種類、

注目すべき類型が存在する。

「さりげなく腹で押すやつ」である。
以前「海に飛び込むペンギンの群れ」の映像を見て愕然としたことがある。

ペンギンの群れが崖の前で立ち止まり、

押しあいへしあいをした末にぼちゃぼちゃ海に落ちていく映像は有名であるし、

最初に落ちる一羽は必ずしも勇敢なのではなく、

後ろから押されて仕方なく落ちている、という話も有名である。

(天敵がいる水中には皆「できれば最初には落ちたくない」と思っているらしい。)

ところが、最初の一羽が飛び込む直前をよく見ていると、

すぐ後ろのやつがそいつをつついて落とそうとしているのである。

そしてこいつ、自分が最前列になると慌てて後退し、

また別のやつをつついたり腹で押したりして落とそうとしているのである。

ちょっと待て。なんだお前。

他の映像をネットで探してみたのだが、

最前列にいる連中は必ず後ろの誰かからつつかれたり押されたりしている。

最初に落ちる一羽は「みんなに押されて」落ちているように見えるが、

実際はそうではなく、必ず「決定的なひと押し」をするやつがいるらしいのである。

集団の「最前列のすぐ後ろ」に陣取り、一番前のやつにリスキーな役を押しつける。

これが「さりげなく腹で押すやつ」である。

それを見て思った。いる。こういうやつは人間の中にも、いる。

他人を煽って、まず最初に一線を越えるという、リスキーな役を押しつける。
自分はといえば、そいつが起こした結果を安全な場所から眺めて楽しむ。
押しつけるのに失敗したなら、急いで集団の中に隠れて責任逃れをする。

こういうやつはどこにでもいる。
前述の「お調子者」だって、一人で勝手に調子に乗るのではない。
カーネルサンダースを投げ落とすバカとかパトカーを破壊するバカの陰には必ず、
やれよやっちゃえよと「煽るやつ」がいる。
「さりげなく腹で押すやつ」の存在は、ペンギンに限ったことではない。

人間も鳥も、群れになるとやることはたいして変わらないようだ。

こういうやつは騒ぎが収まった後、こう言うに決まっているのである。
「俺が押したのではない。みんなで押したのだ」

「俺も押されていた。俺も被害者だ」

「あの時は社会全体がああいう状況だった。押さなければ自分が押されていた」

ふざけんなこの野郎。悪いのはお前個人だ!
崖の上で押しあいへしあいをするペンギンを見ている分には微笑ましいが、

人間に置き換えるととても笑ってはいられない。

ちなみに、「さりげなく腹で押すやつ」に利用されて貧乏くじを引くのは、
「お調子者」か、「多数派」のうち不運にも最前列になってしまったやつである。
(その上に、背後への警戒が足りないやつである、とも言える。)
「あまのじゃく」はそもそも群れの最後尾にいるので、押されたりしないのである。
そう考えると、「あまのじゃく」が一番楽なのではないか、と思えてくる。
「あまのじゃく」でいる限りは背後の警戒を怠っていてもいいから、
怠け者の俺にはぴったりである。

まあ「遅れて海に入ったら、もう餌が取りつくされていた」という場合もあるわけで、
その場合は「みんなと一緒に海に入っていればよかった」と一人で泣くことになる。
むろんその場合、同情の余地はどこにもない。

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