そこらへんの超能力者

2013年07月16日 20:42

「超能力者」というのは一般に、存在しない、または極めてレアなものとされています。

DaiGo氏がやっているのは「メンタリズム」です。

Mr.マリックがやるのは「超魔術」です。

ユリ・ゲラーなんかは完全なるマジシャンであり、

本職のマジシャンからすれば二流・三流の腕しか持ち合わせていないそうです。

寂しい話です。

 

ですが、何も未来予知をしたりスプーンを曲げるだけが超能力ではありません。

能力の内容が地味なせいで見過ごされがちですが、

超能力者というのはわりと普通にそこらへんにいる、

もしくは気付いていないだけで自分自身が超能力者だったりするものです。

よくいるのは、以下のような超能力者です。

 

改札の守り人(ゲートブレイカー)

自動改札機を通る時、他の人と同じように切符をタッチさせても、

エラーを出して扉をばたんと閉めてしまうことができる能力者。

忙しい中駅員を呼んだり、人の流れを豪快に堰き止めたりすることができるが、

だいたい急いでいる時に限って能力が発動するため、

能力者本人は自らの能力を不快に思っていることが多い。

過去には近縁種として、入れた紙幣を券売機に認識させず、

何度でもベロベロっと吐き出させることができる「紙幣奪還者(ゲットバッカー)」という

能力者も多くいたが、最近では減少しており、

その原因はハウスダストから食生活の欧米化まで、様々に考えられている。

 

誤植発見者(タイポハンター)

本を読むとやたらと誤植を発見してしまう能力者。

不思議と誤植のある本に当たってしまう能力なのか、

誤植を発見する確率を上げる能力なのか、おそらくはその両方だろうと推測される。

校正者などの職業に応用できる能力であるが、

つい見つけてしまった誤植が気になってしまうため、

本を楽しむ上では、彼らは若干損をしている。

 

備品交換者(プアブラウニー)

なぜかそいつが使う時にばかり決まってトイレの紙が切れたり、

コピー機に入れてある用紙が空になる能力者。

「気付いた人がやる」ことで公平に割り振っていたはずの紙などの交換作業が、

結局みんなそいつの負担になってしまう。

彼らは制御しきれない自らの能力に苦痛を感じているが、

基本的にいい人が多く、大抵はぶつぶつ言いながら黙って交換している。

備品交換者の周囲には、紙を大量に使う「ズボラな人」が存在していることが多く、

備品交換者の能力を発現させているのはこいつなのではないか、という学説もある。

 

蟲の王(バギーロード)

主に蚊やブユといった吸血性の昆虫を自分の体に集めることができる能力者。

そのため、虫が多い空間ではそいつだけが真っ先に刺される。

統計的に基礎体温が高かったり、

新陳代謝が活発で炭酸ガスをよく出す体質の人間が多いが、

ABO式血液型とは関係がない。

その能力ゆえ、彼らは虫のいそうな藪や湖畔などを嫌うことが多い。

ちなみに、「何かを呼び集める能力者」には他に、

夜道をただ歩いているだけで警ら中の警察官を呼びよせ、

やたらと頻繁に職務質問をされる「警ら隊の王(ファジーロード)

焚き火をすると煙がそいつの方にばかり流れていく「煙の王(スモーキーロビンソン)等、

多くのバリエーションがいる。

 

犬猫支配者(ボーンオーナー)

他人が散歩させているイヌや他人の家のネコが初対面にもかかわらずやたらとなつき、

飼い主によると「知らない人にはしない」はずなのに、

この能力者にはやたらと抱きついてきたり腹を見せたりする。

これとは逆に、何もしていないのにイヌやネコの感情を逆撫でし、

ガルルウウゥゥゥとかシャーとか言われる「犬猫刺激者(イグナイター)という能力者もいる。

ちなみに「自民党の石破幹事長がテレビに映るとウチの猫がシャアァァァ!ってなる」

という話も報告されており、石破氏はかなり強力な犬猫刺激者なのであろうと推測される。

 

電撃使い(エレクトロマスター)

冬になると自らの体に向けて電撃を放てるようになる能力者。

ドアノブ、車のボディ、お店の商品棚等を触った時に能力を発揮し、

「パチッ」という音とともに痛みを覚える能力。

ひどいのになると「パチッ」が「バチッ」になり、暗い場所だと火花が見えるようになる。

彼らは強力すぎる自らの能力に苦痛を感じており、

ネックレスやブレスレットの形をした制御装置を装備し、能力を抑えていることもある。

最近では普通に「帯電体質」「静電気体質」と呼ばれている。

 

不良品摘発者(レモンコレクター)

パソコンでもプリンターでもミニコンポでも、

買った電化製品が通常ありえない確率で不良品になる能力者。

中には不良品を引いて量販店やメーカーに連絡し、

送ってもらった代替品がまた不良品である、というケースに出くわす能力者もいる。

また、パソコン教室などで、他人と同じ操作をしているのになぜかそいつだけ

言われた通りの画面が出ない奴、などもこの能力を持っていると推測される。

この能力を発現させる原因には諸説あり、

不良品摘発者たちは前出の「電撃使い」の能力も併せ持っており、

それがこの能力の発現に関係しているのでは、とする研究や、

機械音痴でありしばしば設計者が想定しない操作をするのでは、とする研究もある。

似た能力として、通常ありえない確率で乱丁・落丁本に遭遇する

「奇本蒐集家(ミッシングページ)があるが、

能力の原理は完全に別系統であり、奇本蒐集家の方はむしろ、

前述した誤植発見者の近縁ではないかと考える立場が、現在の学会では主流である。

 

 

ちなみに似鳥も、かなり弱いながら「不良品摘発者」で、かつ「電撃使い」でもあります。

超能力者としてはなかなかのレベルなのではないかと自負しております。

 

まあ現実には超能力なんて、あって困ることの方が多いものだと思いますが。

飛行機は嘘で飛ぶ

2013年04月01日 19:41

1年に1度、○○のことを考える日」というのが、暦の中には時々あります。

1231日は大晦日。1年を振り返り、「今年はこうだったなあ」と考える日です。

815日は終戦記念日。日本人にとっては戦争と平和を考える日です。

91日は防災の日。防災意識を新たにする日です。

もっとも現在ではこれに117日と311日が加わってしまっています。

これ以上増えないことを祈りますが、絶対にそうはいかないことを確認する日でもあります。

 

その他にもまだまだあります。

たとえば911日は、アメリカ人にとって戦争とテロのことを考える日でしょう。

423日は本好きの人にとって、自分たちがマイノリティであることを考える日です。

1224日は自分がひとりぼっちであることを、

214日と314日は自分がもてないことを、それぞれ確認する日です。

1031日はこの世界がオバケに満ちていることを確認する日ですし、

それぞれの誕生日は自分がもう若くないことや、自分が大人になったことを確認する日です。

みんな1年を通して、いろんな日にいろんなことを確認しながら生きています。

そして41日も、そうした「考える日」の1つだと思っています。

 

41日はエイプリルフールです。嘘ついていい日です。

みんな「今日なら許される」ということで、ここぞとばかりに嘘をつきます。

むしろ同調圧力の強い日本では、何か嘘をつかないといけない空気になっちゃってます。

それゆえ、周囲のあらゆる情報が嘘に見えてきます。

「スマホ普及率は現在4割超」は嘘かもしれないし、

「ヒッグス粒子の存在を確認」も嘘かもしれないし、

インスタント食品のパッケージについている「こちら側のどこからでも開けられます」も嘘。

飛行機が空を飛べるのも嘘なら、空が青いのも嘘。

地球が丸いのが嘘なら、隣のこの人が確かに存在しているという事実も嘘。

ニュースも会話も物理法則もみんな嘘かもしれない。

自分が確かに自分であり続けているというも嘘で、

今の自分は先月頭くらいに新造された別の自分で、

同じ自分であると思い込んでいるだけかもしれない。


4
1日になると、毎年そういう不安に襲われます。

ちょうどいいので41日には1年に1度、あらゆることを疑ってみています。

そして他のすべての「考える日」が1年に1度、

放置しておくと腐る何らかのものの手入れをする日であるのと同様、

41日も、あらゆることを「嘘かも」と疑うことで偏見や妄信を払い、

自尊心が傷つくのが怖くて確認することを避けていた自分の性質を直視する、

おそろしい日のような気がしています。

 

そういえば「飛行機がなんで飛べるのかは解明できてない」というのは嘘なんだとか。

まあ、飛べますよね、あれ。

離陸前とか見てると、飛行機ってすごい頑張って加速してます。

あれで「お前、実はなんで飛べてるのか分かんないから」とか言ったら可哀想すぎますし。

虚構世界ではしばしば西から日が昇る

2013年02月12日 00:20

ついでに、小説を書いていると作品世界内でよく起こる怪奇現象あれこれ。

 

①時間がふっ飛ぶ。

場面転換後の冒頭の文章がこうなります。

 

翌日の水曜日、僕はまず放送室から訪ねることにした。……

(中略)

次の日、例によって昼休み後にのっそりやってきた加納先輩を捉まえ、……

(中略)

一晩明けるとたいていのことは冷静に見つめられるようになる、ということらしい。

翌日登校した僕は、……

(中略)

結局、その晩はいくら考えても推理が前に進まず、僕は寝入るまでずっと「不可能だ」という結論の周囲を
うろうろしているだけだった。翌日の登校中も、授業中も昼休みも、……

 

……おかしいですね。何回「翌日」になるのでしょう。

最初が水曜日なのですから、最後のシーンでは土曜日になっているはず。

なのに、普通に学校があるのはどうしたことでしょう。

それともこの主人公は土曜日と日曜日という時間を体験できず、

金曜日が終わると月曜日に飛んでしまう特異体質なのでしょうか。

 

 

②太陽が西から昇る。

たとえば、こういうのを書いてしまったりします。

 

僕は自室のベッドに寝転がったまま、窓越しに空を見た。十二月の太陽は、この時間でもう赤く色付き、
沈む支度を始めている。

(中略)

むろんそれは夢であり、現実の僕は自室のベッドで寝たまま、シーツをぐしゃぐしゃにしてのたうちまわって
いただけだった。なぜこんなにのたうちまわっていたのかについては一瞬のうちに忘れてしまい、溜め息をついて
カーテンを開ける。赤く染まって上下にやや潰れた、朝の太陽が昇っていた。

 

これも変です。「自室のベッド」の横にある窓はどっちの方角を向いているのでしょう。

同じ窓から沈む夕日と昇る朝日が見えています。

それともこの家は某有名建築家の建てた奇抜な「館」で、

夜の間にくるくる向きを変えるのでしょうか。

 

③登場人物の二重体が出現する。

校正さんによく指摘されるミスです。

 

「ちょっと待った」綿貫さんが立ち上がった。「だからさっき言っただろ。15分しかなかったんだ。
その
15分という数字だって、途中1度も立ち止まらず、しかも誰にも見られなかったっていう前提でだぞ?」

(中略)

「もう知るか。少なくとも俺は関知しないからな」綿貫さんは憤然として立ち上がり、乱暴に戸を開け放して
出ていった。

 

綿貫さん、あなたこそちょっと待った。

あなた最初のところでもう立ち上がってたのに、

どうやって次でもう1回立ち上がったんですか。

それとも最初に綿貫さんが立ち上がった瞬間に、

座ったままの状態の彼の「二重体」が出現し、次に立ち上がったのはそいつ、

ということでしょうか。

 

 

その他にも、主人公の隣の席が3つも4つもあったり、

朝の新宿駅ホームなのに囁き声で会話ができていたり、

夜、暗がりにいるのに向かいにいる人の表情が分かってしまったり、

小説世界を構築中は様々な怪奇現象が起こります。

で、世界を作っている著者は、しばしばそういうことに気付かず、

編集さんや校正さんに言われて慌てるのです。


1つの世界を前後の矛盾なく創りあげるというのは、意外と大変みたいです。

そう考えると天におわすあの方とかイザナギ・イザナミとかブラフマーとか、

ああいう創造神の方々の後ろにも、

実は「編集神」とか「校正神」とかがいたのかもしれません。

日出づる国の優しい怪物

2012年11月26日 21:38

子供のころから魑魅魍魎が好きで、妖怪とか怪物関係の本をよく読んでいたのですが。

日本の妖怪と海外の妖怪を比べると、気付くことがあります。

 

たとえば海外の妖怪。

 

・ヴォジャノーイ(スラヴ・ヨーロッパ)

池や川に棲む。全身苔だらけの巨大な魚またはカエルの姿で、人間を食う。

 

・キョンシー(中国)

腐らない動く死体。怪力で、人を殺す。

 

・ウェンディゴ(北米)

身長五メートルを超す巨人。人を凍死させて食う。


 

怖いんですよ。海外のは。

これに対し、日本の妖怪。

 

・垢舐め

掃除されていない風呂場に出る、長い舌で垢を舐める妖怪。

 

・枕返し

寝ている人の枕を動かしてしまう妖怪。

 

・豆腐小僧

雨の日に豆腐を持って現れる子供の妖怪。

この豆腐をうっかり食べてしまうと、全身にカビが生えてしまう。


 

……やることがぜんぜん怖くないのです。

それより江戸時代には、

妖怪の持ってきた豆腐を「うっかり食べてしまう」ような人がいたのでしょうか。

 

もちろん、海外にも怖くない妖怪はたくさんいますし、日本にも怖い妖怪はいます。

ですが、たとえば。

 

・チョンチョン(ペルー)

耳を翼にして空を飛ぶ生首。人を殺す。

殺された人間は首なし死体となり、首は新たなチョンチョンとなる。

 

・抜け首(千葉)

腹立たしいことがあると夜中に首が抜けてしまう男。翌朝、驚かせたことを謝りにきたりする。

 

・デュラハン(ケルト)

首なし馬に乗った首のない騎士。出会うと死ぬ。

 

・トシドン(鹿児島)

首なし馬に乗った老人。暮れに家々を回って悪い子をこらしめ、お餅を置いていく。


 

似たような外見の妖怪でも、日本に来るとなんだか、いい人になってしまうのです。

中には命を取るようなものもいるのですが、日本の妖怪は基本的に、

人間を脅かしたり迷わせたりするだけで、あんまりたいしたことはしないのです。

そのかわり。

 

・のっぺら坊

振り返って目鼻口のない顔を見せ、びっくりさせる妖怪。

 

・顔撫で

夜道を歩いている人を冷たい手で撫で、びっくりさせる妖怪。

 

・イマモ

山道を行く人をびっくりさせる妖怪。

旅人が「昔、ここには血だらけの手が出てきたそうだ」と話すと、

「イマモ!」と声がして、血だらけの手がごろごろ転がってきた。

びっくりして逃げ出した旅人は、逃げた先でうっかり

「昔、ここでは人の生首も落ちてきたそうだ」と話してしまったが、

そうするとまた「イマモ!」と声がし、生首が転がってきたという。


 

……脅かすスキルだけ異様に発達しているのです。これが日本の妖怪の持ち味なのです。

 

なんでこんなことになるのか、については発祥の経緯などから色々に説明できるのですが、

全般にやることがみみっちくなる最大の原因は、次の妖怪にあると思うのです。

 

・ぬらりひょん

大きな商家などが忙しい時間帯にぬっと現れ、

その家の主人のような顔でどっかり居座り、勝手に飲み食いする妖怪。

家人は皆忙しいし、あまりに当然のような顔で飲み食いしているため、

家の者は「誰かの招いたお客人だろう」と勘違いし、

客は「知らないが、この家の偉い人だろう」と勘違いするため、誰も咎めない。

そのためこの妖怪が現れた家は、勝手に飲み食いされてしまう。

水木しげるによると、日本妖怪の総大将だという。

 


……総大将がこのみみっちさでは、下々の者がああなるのも無理はないわけで。

ミステリーに不都合な真実

2012年10月23日 23:45

フィクションではけっこうあるけど現実にはありえないこと、というのがありまして、
ミステリーのプロットを作る時に頭を抱えることがあります。

たとえば。

 

「クロロホルムで眠らせる」

 

Wikipediaの記事を引用します。

 

クロロホルム自体は実際には多少吸引しても気を失うことはなく、せいぜい咳や吐き気、あるいは頭痛に襲われる程度である。しかし、クロロホルムが肌に触れると爛れを発生させ、一生消えることのないキズをおわせることにもなる。なおクロロホルムを相当量吸引すると気を失うこともあるが、その場合、腎不全を引き起こし、死に至らしめる可能性が高い。

 

実はこうなんです。

つまり現実には、布に染み込ませたクロロホルムを後ろからガバッ! とやって

被害者ががっくりと崩れ落ちる……などということはないのです。

また、クロロホルムは空気中に置いておくとどんどん変化してしまうので、

クロロホルムを染み込ませた布をぶらぶら下げて歩いていたら、

あっという間に使用不能になってしまうそうです。

それ以前に、クロロホルムは毒物および劇物取締法にいう「劇物」であり、

そこらへんの人が簡単に手に入れられるものではありません。

ネットなんかで「クロロホルムってどこで売ってますか?」とか

質問している人がいますが、無理ですから。

気持ちは分かります。こういうヤバい系のアイテムは思春期のハートをくすぐります。

でも、妄想だけにとどめておきましょう。

スタンガン持ち歩くとか、そういう系統の「痛い人」になっちゃいますから。

 

 

同様に、これもダメです。

 

「殴って気絶させる」

 

「映画じゃあるまいし、『殴って気絶させる』なんてことが簡単にできるとでも思っていたの? 人間は、怪我をしない程度の力で殴ってもそうそう失神しない。逆に確実に失神させられるような力で殴れば頭蓋骨折、下手をすれば即死よ」

 

……と、いうことをに書きました。

事情が事情のため、鴇先生は少し厳しめな言い方をしているはずですが、

現実にはこんな感じです。

後頭部をぶん殴られて失神(正確には「脳震盪による意識障害」で、失神とはちょっと違います)する人は
いますが、あれはボクシングなんかの「意識を刈り取る一撃」みたいなもので、

完全にラッキーパンチなのです。狙ってやれるものではありません。

仮にやれたとしても、倒れた相手をどこかに運んで細工をして、

などとやっている間に目覚めてしまうでしょう。

したがって、もし犯人が

「被害者を殴って気絶させておいて、その間に……」

という犯罪計画をたてていたら、

その犯人は最初から、幸運に頼った計画をたてていることになります。

ミステリーの国の住人がやっていいことではありません。

以前、担当編集者に「じゃあ、どうやって気絶させたらいいんですか?」と訊いたら、

「うーん……裸絞めで絞め落とすとか……」という回答が。

確かに現実的だけど美しくない。美しくないよう……。

 

 

さて、ここからが問題です。

それでは、計画的に殴って気絶させてるミステリはダメなのでしょうか?

 

一概にダメとは言えない気がします。

確かに、理屈からいえば、

「現実にありえないことを前提にして話を作っている」

ことになるので、ミステリーの常識に従うなら、これは減点要素です。

ですが、読み手の全員がそういう「現実」を知っているとは限りません。

読み手の半分が「こんなこと現実にはないよ」と知っていたとしても、

残りの半分がそのことを知らなかったとしたら、それは本当に減点要素でしょうか。

また、「知っている読み手」が必ずしも「現実にはないからダメ」と考えるかは分かりません。

「まあフィクションだからね」とか「一般的には知られてないことだしな」と、

許容してくれるかもしれないわけです。

同様に、「知らない方の読み手」が、

「こんなの殴って気絶させればいいのに。なんでそうしないの?」と

逆に首をかしげてしまう可能性だってあるわけです。

 

そうなると、「現実には不可能または困難だけど一般的には可能だと思われていること」を

登場人物にさせるかさせないかは、結局のところ書き手の裁量次第になるわけです。

「現実にできないことは一切やらせない」とストイックに頑張るか、

「一般的にOKと思われていることなら書いていいことにしよう」と許容するか。

これは単純にどちらかにするべき、というものではなく、

作品の雰囲気であったり、話の盛り上がりであったり、

そういったものを考慮してそのつど判断するべき問題、ということになります。

ミステリーを書く時に悩むところです。

 

 

でも誰か、ちょっと嗅がせるだけで人間をさっと気絶させられて、

それでいて毒物でも劇物でもなく家庭用洗剤とかから気軽に作れる薬物、

開発してくれないかなあ。



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