どんでん返しのお知らせ

2018年01月07日 10:48

どんでん返し

双葉文庫より発売中の『新鮮 THEどんでん返し』に短編が収録されています。
他の執筆者は青柳碧人氏、天祢涼氏、大山誠一郎氏、岡崎琢磨氏、水生大海氏。
「どんでん返し」がテーマなので、全員どうやってどんでん返しを仕掛けるか競っています。
似鳥のは数年前の「ダ・ヴィンチ」に収録された『筋肉事件/四人目の』という短編が載っています。
ミステリ史上初、驚天動地のトリックで、掲載時にははしゃぐあまり「読者への挑戦状」を出したやつです。
(ただし諸般の事情により、雑誌掲載時からだいぶアレンジしています。)
こういうこともできるんだ! というトリックで騙されること請け合いなので、是非お読みいただきたいところです。
よろしくお願いいたします。

もう一度だけサンタクロース

2017年12月24日 22:05

……おやおや、まだ眠れないのかい? 困ったねえ。
……お話? ……ううん、そうか。じゃあ、1つだけお話を聞いたら眠れるかい? 約束だよ。
……そうだね。それじゃあクリスマスだから、サンタクロースのお話をしようか。


 夜空の星がきれいな、よく晴れたクリスマスの前の晩のことだ。ある町の空の上で、サンタクロースのおじいさんが困っていた。……なに、サンタクロースなのに困るのかって? そりゃあ困る。サンタクロースだって困る。なにしろ彼の体は、もう半分消えかかっていたんだからね。
 どうして消えかかっていたか? それは、サンタクロースが「偶像」だからなんだ。
「偶像」っていうのは、すこし難しい言葉だね。見たことはないけど、みんながあるって信じてお祈りをするもの。そういうものを「偶像」って言うんだ。だから、イエスもマリア様も「偶像」だね。
 でもね。「偶像」は、みんなが「いる」って信じてくれるから「偶像」なんだ。「いる」って信じてくれる人が誰もいなくなっちゃったら、「偶像」は消えちゃうんだよ。
 そう。サンタクロースのおじいさんは消えかかっていた。その町にはもう、サンタクロースを信じている子供なんて、ほとんどいなくなってしまっていたんだ。君はサンタクロースを信じているかい? ……そうか。それならきっと、僕たちの町にはまだサンタクロースがいるだろう。でも、お話の中のこの町では、サンタクロースは消えかかっていた。
 サンタクロースのおじいさんは、自分が消えそうになっていることを知っていた。それでも、どうしようもなかった。どうすればこの町の子供たちがサンタクロースを信じてくれるのか、わからなかったんだ。町の子供たちはみんな、「サンタクロースなんていない。本当は、プレゼントをくれるのはお父さんだ」って言っている。それに、みんなの前に現れてみようとしても、おじいさんは力が出なくてガリガリに痩せちゃっているし、トナカイもソリも消えてしまっていた。歩いてプレゼントを持ってくる、痩せたサンタクロースなんておかしいだろう? そんな姿で子供たちの前に現れても、誰も「サンタクロースだ」なんて信じてくれない。おじいさんはため息をついて、夜空の寒さにこごえていた。赤いコートも帽子も、もう消えてなくなっていたからね。
 それでもまだおじいさんが全部消えないでいられたのは、今、おじいさんが見下ろしている、赤い屋根のおうちのおかげだった。このおうちの子供だけは、まだサンタクロースがいるって信じてくれていたんだ。
 おじいさんは決めた。自分はもうすぐ消えてしまう。それはもう、どうしようもない。一度信じなくなったものをまた信じられるようになるのは、とてもむずかしいことだからだ。だけど最後に、この町で最後までサンタクロースを信じてくれていたあの子にお礼がしたい。どうせ消えるなら、最後にあの子を笑顔にしたい。あの子のほしがっているものはわかっている。もう弱りに弱っていて、プレゼントを作り出せるかどうかわからなかったけど、おじいさんは決めた。そして、体に残ったわずかな力をすべて集めて、祈りをささげた。マリア様、どうか私に力をください。ほんの少しだけ、たった1つのプレゼントさえ届けられたなら、私はもう消えてもかまわない。だから最後に、もう一度だけサンタクロースのお仕事をさせてください。
 おじいさんは力を込めて、プレゼントの箱を頭に思い浮かべだ。それ!
 ポンッと音がして、プレゼントが現れた。赤い箱に、金色の刺繍がついた緑のリボン。おじいさんは喜んで、さっそくプレゼントをかかえると、ベッドに靴下が下げてあるその子の部屋に舞い降りた。
 パジャマを着た子供は、目を丸くして立っていた。そりゃあそうだ。いきなり目の前に人が現れたら、驚くに決まっている。おじいさんはにっこり微笑むと、持っていたプレゼントを差し出して、何万回も繰り返してきた台詞を言った。
「メリー・クリスマス。いい子にしてたかい?」
 子供は、きょとんとしていた。
 おじいさんがプレゼントを渡そうとして近づくと、部屋のドアが開いて、子供のママが入ってきた。「なにか声が聞こえた気がするけど、どうしたの?」
 子供のママは部屋に入ると、おじいさんを見てぎょっとした。おじいさんの方もびっくりしたけど、すぐに笑顔になって、子供にプレゼントを差し出した。
「私はサンタクロースだよ。君が1年間いい子にしていたから、プレゼントを持ってきたんだ」
 おじいさんはそう言って、子供の頭を撫でようと手を伸ばした。
 すると、子供のママがいきなり動いて、おじいさんの手を払いのけた。子供のママは言った。
「あなたは誰なの? どこから入ってきたの? 出ていって!」
 おじいさんが驚いている間に、子供のママは子供を抱っこして、大声で子供のパパを呼びながら部屋から出ていってしまった。「パパ、パパ来て! 子供部屋におかしな人がいるの!」
 ひどいと思うかい? でも、しかたがなかった。おじいさんはボロボロで、コートも帽子もない。トナカイもいないしソリもない。とてもサンタクロースに見えなかったんだ。子供のママはきっと、いきなり部屋に入ってきたおじいさんを泥棒だと思ったんだろう。
 サンタクロースのおじいさんは赤い屋根のおうちから逃げ出した。夜空の上の方にむかって、逃げて逃げて、雲の上でぐったりしてうずくまった。プレゼントは逃げてくる途中に消えてしまった。
 それに、もう力が残っていなかった。おじいさんは自分の体が消えていくのを感じながら、わんわん泣いた。おじいさんは悲しかった。せっかく作り出せた最後のプレゼントも渡せなかった。自分は最後の仕事をやりとげることができないまま、泥棒だと思われたまま消えなければいけない。あの子の笑顔を見ることもできなかった。それが悲しくて、おじいさんはわんわん泣いた。涙が止まらなくて、どんどん出てきた。その涙も冷たい風にさらわれて、ちらちらと散っていった。
 さよなら、町の子供たち。さよなら、昔子供だった大人たち……。

 ところが、しばらくして、おじいさんは気付いた。おや? 自分の体が、まだ消えていない。
 どうしてなのだろうと、おじいさんは下を見た。さっきの子供が庭に出ていて、手を差し出して興奮していた。
――雪だよ! 雪が降ってきた! クリスマスにお天気雪だ!
 たしかにその家の上にだけ、ひらり、ひらり、と、雪のかけらがいくつか、舞い降りていたんだ。子供のママとパパもふしぎがっていた。空は晴れているのに、どうして雪が降るんだろう。
 子供は言った。
「ふしぎだね。これって、ひょっとしてサンタクロースのプレゼントなの?」
 サンタクロースのおじいさんははっとした。そう。さっきおじいさんの流した涙が細かく散って、凍って、雪みたいに舞い落ちていたんだ。
 おじいさんは急いで、まわりの空から水のつぶを集めた。空の上からそれをまくと、水の粒は凍って雪になって、町にきらきらと降りそそいだ。
 町の人たちは家の外に出て、晴れているはずの夜空から降ってくるふしぎな雪にびっくりした。星空から降ってくる雪はとても綺麗で、少し嬉しくなった。そして子供たちは思った。
「クリスマスにこんなふしぎで綺麗なことがあるなんて。ひょっとしてこの雪は、サンタクロースからのプレゼントかな?」
 大人たちも、ちょっとだけ思った。
「そうかもしれない」
 サンタクロースのおじいさんは空を飛びまわって、町じゅうにどんどん雪を降らせた。力がどんどんわいてきた。赤いコートと帽子が現れた。プレゼントをいっぱい詰めた白い袋が現れた。夜空を駆けるソリが、2頭のトナカイが現れた。サンタクロースはどんどん太っていって、白いもじゃもじゃのひげもどんどん生えてきた。
 サンタクロースは元気な声で言った。
「メリー・クリスマス!」

 それからというものその町では、クリスマスになると時々、ふしぎなことが起こるようになった。少しだけお天気雪が降ったり、流れ星が見えたり、迷子の犬が帰ってきたり、火を入れ忘れていたオーブンから、こんがりおいしく焼けた七面鳥が出てきたり。
 いつしか町の人たちは、そういうことがあるたびに、見えないサンタクロースに感謝して、「メリークリスマス!」と言うようになったとさ。
 おしまい。


……さあ、ゆっくりお休み。
……あれ? 眠くなくなっちゃったのかい? えっ、お腹が空いた?
……うーむ、「七面鳥」と言わなければよかった。どうしたものか……。

シリーズ第5弾! 新刊のお知らせ

2017年12月08日 10:42

5巻リサイズ

戦力外捜査官シリーズ第5段『破壊者の翼』が発売中です。
今回はシリーズ最強の犯人であるドローン使い「鷹の王」が大暴れ。
頭上から突然降りてくる、顔の見えないドローンの恐怖。
ドローンを使ってできる犯罪のアイディアはすべてここに入っています。
冒頭からすでにクライマックス! のノンストップ展開でお送りいたします。
よろしくお願いいたします。

ちなみに設楽が持っている拳銃がオートマチックになっていますが、
これは本編で珍しく撃ちまくり、いつものニューナンブでは弾丸が足りなくなるからです。

文庫版4巻と「感動の物語」のお知らせ

2017年11月05日 12:30

文庫版4巻

先月の河出文庫版戦力外捜査官3巻『ゼロの日に叫ぶ』から連続刊行!
河出文庫版戦力外捜査官4巻『世界が終わる街』が発売中です。
東京では「鉄道自爆テロ」という形で、極めて簡単に多数の被害者を出せる、という話です。
テロのある東京。そして設楽恭介暗殺計画。
シリーズ最高のスピード感でお届けします。
もちろん、この巻からでも全く問題なく読めます。よろしくです。



それともう一つお知らせが。
ハルキ文庫からアンソロジー『共犯関係』が出ております。
執筆者は秋吉理香子さん、芦沢央さん、乾くるみさん、友井羊さん、あと似鳥です。
「共犯」をテーマにしたアンソロジーですが、
私が書いたのは「余命3ヶ月の少年に起こった奇跡と感動の泣ける話」です。
「余命」「感動」の単語にモヤモヤしたものを感じる方は必読です。
こちらもよろしくお願いします。

共犯関係












文庫版が出ております

2017年09月26日 12:04

文庫版3巻

戦力外捜査官シリーズ3冊目『ゼロの日に叫ぶ』の河出文庫版が出ております。
東京中を巻き込んだ前作『神様の値段』からさらにスケールアップ。
最強の犯罪者「名無し」との戦いです。
毎回重傷を追う設楽には大変申し訳ないと思っております。
巻を追うごとにどんどん盛り上がってゆくシリーズです。
よろしくお願いいたします。








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