大崎梢さんとの対談記事。

2016年08月06日 22:42



発売中の『CREA』9月号に、
大崎梢さんとの対談記事が載っています。
お薦めの本とか、おっさんの方の似鳥がでかいだけで動けない、とか、
本を買う時の心理とか。

実はこの対談、2時間くらい脱線して記事にならなそうな話をしていたんです。
完成した記事を読むといかにも無駄なく、流れるように論理的に話をしているかのようですが、
そこは文章を書いた瀧井朝世さんが絶妙にまとめてくださったのです。
いやー……よかったよかった。はっはっは。

脳がくしゃみをしただけなんです

2016年08月03日 14:40

あなたは電車に乗っています。

昼下がりの平和な車内です。

座れはしないけどそう混んでもいない、吊り革に掴まる人がちらほらいる車内。

皆、静かです。座っている人も立っている人も、

大抵本を読むか携帯を操作しています。

何もせずぼーっとしている人もちらほら。

あなたの隣に立っている上品な顔のおじさんも、

無表情で窓の外を流れる景色を眺めています。

すると、おじさんが突然、顔を憎悪に歪めて呟きました。

「クソ犬が!」

 

あなたはぎょっとします。

しかしおじさんはもう、もとのぼーっとした表情に戻っています。

一瞬前に鬼の形相でNGワードを吐いたことなど忘れているかのようです。

ブキミです。あなたはそっと吊り革を離し、

クソ犬おじさんから離れました。

 

離れなくても大丈夫です。

クソ犬おじさんはたぶん、「頭の中にほこりが立った」だけなのです。

いきなり槍玉に上げられた犬のみなさんの「なんでボクが?」という悲しげな顔が目に浮かびますが、

それはさておき。

これって、誰にでも経験があることなのではないでしょうか。

何か記憶を呼び覚ますような特別なことがあったわけでもないのに、

しゃっくりをするように不意に「過去の恥ずかしい失敗」を思い出してしまい、

「アーッ!」と叫びたくなってしまう。

故・中島らも先生はこの現象を「頭の中にほこりが立つ」と表現していました。

普段は意識されないけど心の奥底に積もり積もったほこり(過去の恥ずかしい失敗の記憶)が、

何かの拍子にぶわっと舞い上がってしまい、くしゃみや咳を起こさせる、というわけです。

「くしゃみや咳」の表現方法は人それぞれで、

「頭の中で『アーッ!』と叫ぶ」程度で済む健康な人もたくさんいますが、

時折「脳内鼻炎持ち」のような人がいて、

頭の中でほこりが立つと涙を流し鼻水をたらしながら、あられもなく発作を起こします。

このくしゃみは強すぎて到底脳内だけでは処理しきれず、

反射的に顔をゆがめたり、強く体のどこかを掻いたり舌打ちをしたり、

社会常識的にはあまり望ましくない反応として体の外に出ます。

前出のクソ犬おじさんは、その「くしゃみ」の内容が「クソ犬が!」だったわけです。

かなり重度の脳内鼻炎持ちだと言えるでしょう。

 

実は何をかくそう、私も脳内鼻炎持ちです。
しかもかなりの重症です。

いつ頃から始まったのか定かではありませんが、

私はちょっとしたきっかけで頭の中にほこりが立ち、

「中学3年の自己紹介の時にやらかしたミス」とか

「小学6年の時に泣いたこと」「大学時代にやっちまった言い間違い」といった、かなり昔で、

常識的に考えれば「もうそんなこと忘れてもいいだろう」というレベルの痛い記憶まで

いまだに舞い上がっては、激しいくしゃみを起こさせます。

最初の頃は犬おじさんと同様、顔をしかめて「クソッ!」と呟く程度だったのですが、

大人になるにつれ症状が悪化してゆき、

ひどい時は突然わざとらしく「アッハハハハ!」と笑いだしたり、

歯をぎりぎり噛みながら「殺してやる!」と口走ったり、

ちょっとお外では厳禁なレベルの激しいくしゃみが出ておりました。

さすがにヤバいと思ったので、人のいる場ではなるべくこらえるようにしていたのですが、

1人の時は思うさま「殺してやる!」と吐き捨てていました。

それまで何もなく平然とした顔で過ごしているのに、

いきなり両親を殺し妹を連れ去り自分を改造人間にした悪の組織の親玉でも

見たかのような表情になって「殺してやる!」と口走るわけです。

怖いよ。

 

どうしてこんな余計なことが起こるのでしょうか?

こんなどうでもいい現象を研究している人はいないので確かなことは分かりませんが、

人間の脳は一見ボケッとしているだけの時にも実はせっせと活動しており、

夢を見て記憶を整理するように、過去のエピソードをソートしているのではないでしょうか。

「エピソード」と「ソート」で韻を踏んでいますね。我ながらいいセンスです!

(たとえばこう書くと、それがまた新たな埃となって脳内に積もるわけです。)

その「お掃除」の過程でほこりが立ってしまう、というのが、個人的な仮説です。


では、どうしてみんな「くしゃみ」が汚い罵り言葉だったりするのでしょうか?

これは脳内鼻炎持ちなら、誰でも自分なりの説明ができると思います。

たとえば私の「殺してやる!」は、別に悪の組織の親玉を思い浮かべているわけではなく、

殺してやりたいのは「その失敗をした過去の自分」なのです。

「アッハハハハ!」というわざとらしい笑いも同様で、

「失敗をした過去の自分」をあざ笑っているのです。

どちらのくしゃみも多分に演技的なのですが、それはつまりフォローなのです。

「こんな恥ずかしい失敗をした自分をあざ笑ってますよ!」と

見えない観客に向けてアピールすることで、恥ずかしさを軽減させようとしているのです。

また、罵り言葉を吐くとエンドルフィンが出て苦痛が軽減される、という研究もあり、

脳内くしゃみが汚い言葉になりがちなのは、

恥を思い出す時の痛みを和らげようとしているせいなのかもしれません。

人によっては「ああああすいませんすいません」「違う違う」といった

弁解系が出てしまうタイプもあるようで、こちらの方が分かりやすいかもしれません。

クソ犬おじさんは、恥ずかしい過去に悶えているだけなのです。

そっと離れてあげましょう。


ちなみに、頻繁に頭の中でほこりが立つときは、
睡眠不足やストレスなど、何らかの不調がある時が多いように感じます。
くしゃみは体からのサイン。あなたはきっとお疲れなのです。
帰ったらなるべくゆっくり湯船に浸かって、早めに布団に入りましょう。

楓ケ丘動物園シリーズ新作登場

2016年06月23日 14:20

別冊文春表紙

文春文庫から好評発売中の楓ケ丘動物園シリーズ
新しい短編が別冊文春に掲載されています。
今回は連作短編。登場する動物はフクロモモンガです。
走る、よじ登る、そして飛ぶ。活発でかわいい動物です。
よろしくお願いいたします。

野性のお知らせ

2016年05月19日 17:58



発売中の「野性時代」6月号(KADOKAWA)に、
『鼠でも天才でもなく』という新作の短編が掲載されています。
画廊の息子が美術品がらみの事件に挑む、本格美術ミステリです。
作中では実際に名作絵画が図版で掲載され、
それがトリックの鍵になる、という、そういう意味でも本格美術ミステリです。
よろしくお願いいたします。

久しぶりにシリーズ新刊です

2016年04月28日 16:57



前作から何年ぐらい経ったでしょうか。
創元推理文庫の市立高校シリーズ、最新刊が発売です。
既刊6冊はこちら。
今回は短編集です。

〈収録作品〉

『不正指令電磁的なんとか』
パソ研と映研が登場。サイン入りの契約書の内容が知らない間に変わってしまうという、
現実に起こったらおっかない謎のお話です。犯人の仕組んだトリックとは?

『的を外れる矢のごとく』
弓道場が登場。とくに高くもないしそこらへんで買えるはずの「的枠」を
犯人が盗んだのはなぜ? しかも容疑者には全員アリバイが!

『家庭用事件』
珍しく葉山の自宅の話です。
電気の使い過ぎでブレーカーが落ちただけと思いきや、どうもおかしい……?

『お届け先には不思議を添えて』
「放課後探偵団」収録の短編を加筆修正して再録。だいぶ分かりやすくなりました。
ゆうパックを送ったのに、送り先に荷物が届くまでにすり替わってしまうという怪奇現象。

『優しくないし健気でもない』
妹の友人から「何も取られていない」奇妙な引ったくり事件の捜査を依頼された葉山。
真相が見えた時、露わになるその動機とは……?
実はミステリ史上、前例のないトリックが用いられています。
推理力に自信のある方は是非挑戦してみてください。


以上5編。よろしくお願いいたします。


最新記事